Home Sick Child9
信じられない事実だった。
「おい…お前貞治に何をした…」
「何って?俺とアンタの邪魔するから消えてもらっただけだっスよ」
そう言って首筋に纏わりつく腕が爬虫類を思わせるような粘着質で寒気がした。
「だって親友ってだけでアンタの周りウロチョロするんだもん…流石の俺も堪忍袋の緒が切れたってわけだ」
悪く思っている様子も無く心底楽しそうに笑う姿にもう嫌悪以外なにも沸いてこない。
その腕を振り払い軽蔑を含んだ強い視線を向けた。
「………絶対に許さない……」
「何だかんだ言って結局俺の事愛してるくせに」
力一杯振りかぶった掌は見事左頬に直撃した。
真っ赤に腫れた頬を手で押さえ睨みつけられる。
この瞳。
この瞳が全てを捕らえてしまう。
心、体。そして大切なもの。
絶対に離してはくれない。
逃げたい。逃げ出したい。だが出来ない。
「俺から離れないでよ。俺にはアンタしかいないんだから」
近付いてくる顔を、避ける事ができなかった。
それが何よりの証拠かもしれない。
どう足掻いたとしても、彼がこの世で一番大切な存在だという真実に辿り着いてしまうのだ。
【続】