Guilty or Not guilty Last

恥ずかしいから外す!!って言われるん覚悟しとったんやけどな。
光はその日も次の日も指輪を外さんかった。
家帰ってオカンらに散々からかわれて俺の方が先根上げそうなったわ。
俺は大阪港から直で予備校行ったんやけど、先うち戻っとった光が全部バラしてしもたんやって。
いや、待てよ。光が自分から話すわけない。
オカンに尋問されたに決まっとる。
そう思て聞いたら案の定やし、けどもう追究から逃げれんって思った光は開き直って全部話してしもたんやって。
どんな経緯で付き合うようになったんかとかまで全部。
ほなオカンもやっと俺を認める気になったんか、
「やるやない」
って珍しく褒めてくれた。
ニヤニヤ笑いながら言われて何や逆に薄気味悪いわ。
まあ褒められて悪い気せんけどな。
せやけどオカンに責任重大やでって言われて現実に引き戻される。
そうやそうや。
光の心ん中に入れてもろて浮かれとる場合やない。
光を好きになって、光に好きになってもろて、ほんでこれからもずっと一緒にいたいって思った。
ゆうてもまだ高校生やし、この先どうなるか解らんってのが本音やけど、何があっても同じ轍は踏んだらあかん事だけは確かや。
俺は光を傷付けられへんし、傷付けたくない。
幸せにしたりたいし、幸せになりたい。
けどそれは義務感とか責任やなくて光が俺にくれた権利みたいなもんやし、意気込むのも変な話や思う。
前はもっと構えてああせな、こうせな、どないしたらええんやって悩む事多かったけど最近は少ななった。
まあまだまだ光の考えてる事なんか解らん事のが多てオロオロする事も多いけど。
せやけど前よりは自然に光の事考えれてる気ぃするわ。
「あらっ?あららららら?あーらー?」
小春の素っ頓狂な声にハッと意識が現実に戻ってくる。
部活後、皆でマクドでも寄ろかーって並んで歩いてたんやけど、小春とユウジが光の左手凝視してる。
「何っスか」
「こ・れ」
練習中は外してたから今初めて気付いたらしいユウジらが穴開きそうなぐらい見ながら指差す。
絶対怒りながら恥ずかしがって外されるんや思たのに、光は指輪眺めながら平然と言うた。
「ああ、謙也くんにもろた」
「いやぁーん!!ラブラブやなーい!!」
「何やお前ら恥ずかしいなぁーどこのバカップルやねん」
小春に人差し指でほっぺたつんつん突かれて、ユウジには頭小突かれて、ああ今度こそって思ったのに光は言い返しよった。
「ユウジくん」
「なっ…何やねん」
「羨ましいんですか?俺らん事」
「べっ…別に羨ましい事なんかあるかぁ!そんなわけないやろボケっっ!!」
うわっ言い負かしよった。
光の頭どつこうとするユウジを白石が笑いながら止めたってる。
「言うなあ財前」
「はぁ、まあ……学習したんで。照れて恥ずかしがるよってからかわれるんやて」
「開き直ったんやな」
賢い選択やわって白石に褒めてもろて光も心なしか機嫌が上向いたようや。
ぎゃーぎゃー五月蝿いユウジらから離れて光が俺の隣にやってくる。
光はじーって左手見た後ポケットに手つっこんだ。
「光」
「何っスか」
「恥ずかしいんやったら…無理せんでええんやで?」
外さんでいてくれんのは嬉しいけど、からかわれて光が嫌な思いするんは嫌やなあって思ったんやけどな、光は不機嫌に顔歪ませた。
「別に無理なんかしてへんわ」
「そ…そうか?」
折角機嫌良かったのにいらん事言うてしもたんかな。
「ごめんな」
「謝らんでええですよ。別に悪い事してんちゃうのに」
「そ…そやな」
「……これ…」
光はポケットから手ぇ出して、またじーっと指輪を眺める。
「何?」
「…謙也くんにいっつも監視されてるみたいな気ぃしてアホな事考える暇なくなったし」
「監視て…せめて見つめられてる言うてや」
頭押さえて言うたら、ああそうかって光は軽く笑った。
けどさっきのアホな事ってあれやんな。
「もう消えてなくなりたいって思う事、なくなった?」
足止めて、光は何や考えてるようや。
黙って言葉待ってたら、首傾げながらぼそっと言うた。
「完全にはなくならんけど、あの人らと一緒におると……もうちょっとここで皆とおりたいって、思います」
光は前歩きながら騒ぐ白石らの方見ながらちょっと笑う。
「そっか」
「おーいバカップルー!!早よ来ーい!!!」
ユウジのイラついた声が耳に届く。
だいぶ離れてしもた部の仲間達はすでに店の前に着いてた。
皆こっち見て手招きしてる。
光は再びポケットに手ぇ突っ込んで、少しスピード上げて歩き始めた。
けどいらちばっかの集団やから俺らを待たんと先店に入ってしもた。
それ見てまた光はスピード落とす。
「……ほんで、謙也くんが一番に好きやって言うてくれたから…ちょっと自分も好きになりました」
そう言う光の瞳はあの日見せた冷たいもんやない。
もうどこ見てるか解らんような目ぇする事もない。
あったかい色してちゃんと俺が映ってる。
それ見て安心して笑いかけたら、笑い返してくれた。
「あー腹減ったわー」
何もなかったみたいに腹押さえながら光が話題変えよった。
恥ずかしいんは解るけど、ええ雰囲気台無しやろ。
「けど今日晩飯カレーや言うとったらマクドであんま食いなや」
「はーい」
俺も何も考えんと言うて、光も気ぃ抜けた返事してくる。
何やもう普通になりすぎててスルーしそうになったけど、よくよく考えたら変な会話や。
別に一緒に住んでるわけでもないのに。
高校卒業したらほんまに一緒に住まへん?なんて、告った時みたいに軽く言うたら光はどうするんやろか。
興味湧いてきたけど、そんな事軽ぅ言うたら流石に怒られそうやと思いながら、ちょっと幸せそうな光の横顔を見下ろした。
そんでふと昨日寝る間際に光が言うた言葉を思い出す。
「俺、しんどい時ね…ずっとこのまんま目ぇ覚めんかったらええのに、朝なんか来ぃひんかったらええのにって…ずっと思ってたんです」
浅い眠りに逃げて、それでも朝は必ずやってきてその度に絶望して、腹に溜まった闇に負けそうになって、消えてなくなったら楽になれんのにて考える毎日やった。
けど、今は?って聞いたらいつもの生意気な表情浮かべて言いよった。
「今は早よ朝来たらええのにって思うんっスわ。ほんで謙也くんより先起きて涎垂らしてる謙也くんの間抜けな寝顔見んねん」
けらけら笑いながら馬鹿にしたように言うよって、間抜けなって何やねんって言い返したけど、それでも構へん。
暗闇彷徨ったままでおるよりええわ。
どんな理由であれ光が毎日楽しいてしゃーないって笑ってられるんやったら、俺は何でもできる。
そしてもう二度と光にあんな暗く冷たい目はさせへん。
そう強く心に誓って見つめたら、光は応えるみたいに綺麗な笑顔を見せてくれた。



Endless L∞P 

全25話+α、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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