理性切れるんもスピードスターっちゅー話や。光限定にやけどな。
この光にはこういう告白が一番だと思うのー。
そんで長い夜はまだまだこれからです。
Guilty or Not guilty19
「ごめんなさい!!」
素っ裸で平謝りです。
まさかこんな姿で土下座する日がくるとは思てなかった。
けど光は思っきしご機嫌斜めになってしもたし、今謝っとかなとんでもない事なりそうや。
「……ほんま最悪や…何考えとんねん…」
俺と同じで素っ裸の光はベッドに寝転んで壁向いてこっちからは顔は見えへん。
けど、声が思いっきり怒っとる。
ほんま返す言葉もない。
あんな可愛い事言われて、うっかりムラっときてしもて、ほんで我慢できんで勢いでヤっちゃいました。
しかも必死に声堪えて泣きそうな顔して真っ赤になる光見て収まらんようなって、抜かずの2発です。
そら怒るわな。
一応部屋にカギはかけてあるし、CDかけてたから声も漏れてない……はずや。
せやけど真面目な話の最中やったのに、光が怒るんもしゃーないわ。
「………とりあえず…何か着たらどうですか。落ち着いて話せへん」
「せっせやな!」
光に言われて慌てて寝間着着て、俺がむしり取った光の寝間着急いで拾った。
しんどそうに体起こす光をタオルで綺麗に拭いて、上羽織らせて、さっきやったみたいにボタン留めたる。
けど焦って上手い事留めれんって思ってたら、いきなり光が吹き出した。
「……変な顔」
「え?」
「襲いかかったんそっちやのに、何でアンタのが泣きそうやねん」
「あ……ごめ…」
また情けない顔しとったんや。
けど光のご機嫌は直ったみたいや。よかった。
お互いまた寝間着姿になって、ベッドの上に向き合って座る。
どこまで話しとったっけ。
一時間近く中断した上、間にやってる事がアレやからな…やばい。記憶飛んでる。
冷や汗かきながら必死に記憶辿ってたら、唐突に光が口開いた。
「謙也くんは……いつから俺好きになってくれたんですか?」
「え?あー……いつって…そんなんハッキリ覚えてへんわ」
気ぃついたら光の事ばっか目で追ってて、光が気になって気になってしゃーなくて、
ずっと一緒におりたい、誰のもんにもなってほしくない、俺のもんでおってほしい。
それで気付いた。俺は光が好きなんやって。
けどその時光の目は千歳に向いてた。
俺は、ああ俺だけやないか、皆気付いてなかったけど光は千歳を好きやった。
もしかしたら、今も。
言葉ではもう忘れてるって、何とも思ってへんって言うてるけど光の心に千歳が残ってるんは確かや。
それが恋愛感情やなくっても、それ以上の思いになって光に残ってるんかもしれん。
「光は?何で俺告った時…受け入れてくれたん?何ちゅーか……そん時って、俺の事別に…好きやなかったんちゃうん?」
まあそれは最初っから覚悟しとったから頷いてくれてええんやけど、光はバツ悪そうに目ぇ逸らした。
「あ、怒ってんちゃうで?っちゅーか別に告られたからノリで付き合うとる奴なんか何ぼでもおるんやし、
今好きでいてくれてんやったら始まりなんか関係ないんやし。な?」
黙って頷いてくれてホッとした。
光はしばらくそわそわ落ち着きなく指先で遊んだり足先もぞもぞすり合わせたりした。
その後意を決したみたいに顔上げる。
「…ごめんな謙也くん」
ヒヤッとした。一瞬何に対して謝ってんやって。
最初は好きやなかったのにって事やんな。また早とちりして大騒ぎするとこやったわ。
「初めは、な……ほんまにな……誰でもよかったんです…もし謙也くんより先に別の人に告られとったらそっち受け入れてたやろし…」
「う、うん…」
覚悟しとったからそない衝撃なかったけど、いきなり言われてたら絶対ショックで倒れとったわ。
けどあの時のノリと勢いは間違いやなかってんな。
もしあん時言わんかって他の奴に光取られてたらって思たら腸煮え繰り返るわ。
人生何事もタイミング勝負やな。
「けど……もし、他の奴と付き合うとっても、今の俺はなかった思う」
「え、あ…ええ?!」
「まだ先輩の事中途半端に引きずったまんまで…立ち直れてなかった思うんです。せやから……あり…ありがとう…謙也くん」
明日は暴風雨になるんちゃうか。
光がこんな自分の事さらけ出してくれるなんて。
感動してぼけーっと光ガン見しとったら照れたように顔逸らされた。
ヤバい。
またうっかり悪魔の囁きに耳貸しそうになってしもた。
俺は必死こいて耳元に飛び回る白石似の悪魔振り払う。
「俺あんな訳わからん返事したのに……謙也くんはめっちゃ大事にしてくれるし…」
あー……まあ…なあ。二番目にしろとか普通に考えたらおかしいわな。
それでも俺が光好きなんには変わらんし、一緒におったんやけど。
「……確かに最初は流されただけやった…けど、な…ずっと一緒におって…だんだん…ほんまに好きやなって、思うようになってきたんやけど…
けど……その度に、な………先輩ん時の事思い出して…俺…こんないい加減やのに……謙也くんの一番になんか…してもろてええわけないって…」
俯いてぼそぼそ言うて、今は泣きそうってゆうよりめっちゃ思いつめたような顔しとる。
ほんまこいつは。
「ひーかる」
俺は光の手ぇ引っ張って抱き寄せた。
やらしい気分にならんようにオカンな俺モードでぎゅーって抱き締める。
背中や頭撫でてやったら安心したみたいに身を任せてくれた。
「ほんまお前…自分大っ嫌いやなあ……」
腕の中の光が頷くんが解る。
「……今も、謙也くんと一緒におってええんかって…思ってます」
「せやから二番目にせぇ言うたんや?」
背中に回された腕に力が篭る。
「俺なんか…誰かの特別になれるとか…思たあかん、そんな上等な人間やないんやからって、思うようにしててんけど……
謙也くんに…他の奴一番にしてええんか言われて頭ん中真っ白んなってしもて…」
「あっ!あれはっ!ううううう売り言葉に買い言葉っちゅーか…」
そんなん本気で言うわけあらへんがな。
ずっと光が一番で光以外考えられへんのに。
けど光は俺の胸に顔押し付けたまま首横に振った。
「ええんです!そん時きても…俺ちゃんと受け入れますから」
何て事言い出すんやこの子は!
「そんな突き放すような事言わんといてや……また泣くでほんま…」
情けない俺の声にびっくりしたんか光は体起こして顔見上げてくる。
あー俺今絶対情けない顔してんやわ。
光が眉毛八の字にして見てくる。
「俺かて不安やねんからなー…お前気ぃついてへんだけで光好きや言う奴ぎょーさんおるし、それこそいつ千歳に取り返されんやてビクビクしとってんからな」
「そんなん…」
「せやから、もう離してもええみたいな事言わんといてな?」
光からの返事はない。
ただ固まったまま俺の顔じーっと見てくる。
「俺は白石にお前に財前はもったいないて言われてんのになあ…」
「そっ…そんなん……ありえへんわ…」
「ユウジには睨まれるしユウジの兄貴にまで牽制されるし…お前の義姉ちゃんにも泣かしたら承知せんて言われるし…そんだけ皆に大事にされてんやで?解ってんか?」
それだけやない。
白石も、小春も、他の皆も。
勿論、千歳もや。
皆こいつが好きやし、それぞれに大事にしてくれてる。
けど肝心なんは光が自分自身認めれるかどうかや。
「そんだけ色んな奴に大事にされてても、やっぱ自分嫌いか?」
しばらく考えて、光は頷いた。
「しゃーないなあ……ほな俺の一番は永久欠番やわ」
「……え?」
「せやから、空席のまんま置いとくっちゅーこっちゃ。ほんで、光が二番目や」
「け…けどそんなん…」
俺は俺の特等席に光以外を座らせるつもりはない。
けどその事を光の負担にはしたない。
光が自分にそんだけの価値ないんやって思い込んでんやったら、それ認められるようになるまで席空けたまんまにしとくだけの話や。
「いつか光が過去乗り越えて、ちゃんと自分認めてもう大丈夫やって自分に胸張れたら、そん時お前の事一番にするわ」
それでどや?って聞いたら、泣くか思ったけど光は自嘲的な笑い声上げてまた胸にもたれかかってきた。
「あんたアホやろ……その席狙とる女ごまんとおんねやで?」
「浪速のスピードスターはモッテモテやからなー」
「解ってんやったら何でそんな勿体ない事すんねん…」
勿体ないて。
俺にしたらそんな訳解らん女のせいで光の為の席埋める方が勿体ないわ。
それにしても言うてる事とやってる事がバラバラやで光。
すがるみたいにぎゅっと抱きついてくる体抱き返す。
「それでもここには光以外座らせたないんやから…頑張って早よ好きになりや、自分の事」
「……けったいな告白やなあ」
声は呆れ気味やけど、光は笑いながら頷いてくれた。