ほんの2m先でこんな事されたら謙也さんの暴れヌンチャクが大変な事になるよね。
アンジェラス シルキー13
山積みにされた段ボールだけでは些か不安だが、まさか自分の着替えなど覗きたがらないだろうと財前は着ていたシャツを脱ぎ始める。
ボタンを一つ一つ外していくと、それを見るともなしに見ていた小春があら、と声を上げる。
「光ちゃん…それサイズ合ってないでしょ」
「えっ…ちょっ」
ぷにっとブラジャーの上から胸を突かれ、財前は慌てて腕を交差させて隠す。
しかし小春に腕を掴まれ強制的に剥がされてしまう。
すると横から腕を伸ばすユウに両手で胸を鷲掴みされた。
「ひゃあっ!」
「うわっ、めっちゃ乳漏れしてるやん。上からも下からも!」
「サイズ合わんと形崩れるわよ光ちゃん」
「けっ…けど…ここ最近急におっきなって…恥ずかしいから新しいの買うてってお母さんによぅ言えんかって…」
小春にはじろじろと見られ、ユウには遠慮なく揉まれ、財前は真っ赤になって抵抗する。
しかし二人がかりで押さえつけられ動く事もままならない。
「つーかでかっ!お前乳でかっ!ムカつくわー」
「ユウちゃんはその奥ゆかしいサイズがええんやない。光ちゃんは細身やのに胸ばっかりおっきいのねぇ」
「これEかFぐらいあるんちゃうん?」
「やっユウちゃっ」
布地と肌の間から手を侵入させると、ユウは直に胸を揉み始めた。
流石にそれはやり過ぎだと財前はそれまでの緩い抵抗を止め、本気で抗い始める。
だがいつの間にか背後に回った小春がホックを外し、ブラジャーを取り上げた。
「なっ…!!」
「うーん、Bじゃ全然サイズ合ってないわよ」
外したブラジャーのタグに書かれたサイズを見て小春が呟くが、当人はユウに胸を揉まれてそれどころではない。
綺麗なお椀型の真っ白な胸が蛍光灯の下に晒され、ますますユウは声を高くする。
「やーらかーっ!めっちゃ気持ちええで小春!白いしふわっふわやしマシュマロみたい!」
「ほんまに?」
持っていたブラジャーを放り出し、小春も財前の胸を揉み始める。
「あーらほんま気持ちええ!これは隠してたら勿体無いわぁ」
「自分あの二人に揉まれすぎておっきなったんちゃうん?」
「そ…そう、です…けどっ」
確かにユウの言う通りだった。
去年までは胸が小さくてそれを悩みにしていたのだが、その話を聞いた白石達が揉めば大きくなると挨拶代わりに無遠慮に胸を揉んでくるようになり、
ここ半年ほどで急激に成長したのだ。
気付けば数段階も大きくなってしまい、ガリガリのお子様体型に胸ばかりが強調された自分のスタイルが財前はどうしても好きになれないでいた。
しかしそれも二人には好評で羨ましいと様々な角度から掴まれる。
「めっちゃええわーこんな枕欲しい」
「ええわねーそれ!ふわふわおっぱい枕っ」
「ちょっと!!ええ加減にしてくださいよっっ…」
小春が顔を寄せ、突き出た胸に頬を付けようとする。
それは辛うじて回避できたものの、ユウは容赦なく胸を揉みしだいている。
「ええやん。別に減るもんでもないんやし、光も気持ちええとか思ってんやろ?」
調子に乗って段々と卑猥さを増すユウの指の動きに、財前はついに声を上げた。
「やぁっっ!止めてくださいっっ…!ちょ…っ助けてっ!!」
「どっどないしたん?!」
財前の悲鳴を聞きつけ、慌てた様子で段ボールの影から謙也が顔を覗かせる。
そんな謙也の目に飛び込んできたのは、背後からユウに裸の胸を掴まれている財前だった。
一瞬何が起きたのか理解出来ず、その場にいた四人全員が固まった。
「いやーん謙也君のエッチぃー!」
真っ先に状況判断を下した小春がきゃーっと黄色い声を上げた。
それに状況を読み取ったユウが財前を体の後ろに隠し、手元にあった洋服を謙也目がけて投げつける。
「何覗いとんねんドアホ!!!」
「すっすまん!!せっせやかて助けてって言うから…!!」
投げられた洋服に視界を阻まれ、よろめいた拍子に謙也はすぐ背後にあった段ボールの山に足を取られ無様に床へと転がった。
そんな謙也の上に一つ、段ボールが落ちてきて中に入った洋服が雪崩のように謙也へと降り注ぐ。
「言い訳はええわ!早よ光に謝れ!」
「ごめん財前さん!!ほんま、覗く気とか全然なかったんや!!」
混乱気味に大きな声で謝る謙也とは対照的に、遠慮がちに財前が呟く。
「い…いえ……あの、変なモン見せてすんませんでした…」
「みっ…見てへん!!ほんま見えてなかったから!!!」
その言葉に偽りはない。
ユウの手ブラにより一番見られてはならないであろう赤い頂は見えなかった。
しかしユウの細い指の間から漏れる真っ白な胸や、華奢な肩やウエストは全て見えてしまっていた。
「もーしゃーないわねぇ…手ぇかかるんやから」
「す…すまん小春…」
服の海に埋もれる謙也を助け出そうと小春が床に散らばった洋服を拾い上げ、全てを段ボールに片付けた。
だがまだ床で呆然と座ったままの謙也に、そっと耳打ちする。
「ええオカズになったでしょ?」
「なっ…!!そそそそそんなんっっっせっせぇへんわっ」
「あらー?あらららー?真っ赤になっちゃって!ウブねぇ!けどさっきのうちらの会話で色々想像しちゃったんでしょ?」
「小春っ!」
若いわねーと高らかに笑いながら、小春はラックに置かれたメジャーを手に再び段ボールの山の向こう側へと消えた。
確かに小春の言う通りだった。
一生懸命に服を片付けている風でその実、謙也の全神経は耳に集中していた。
泣きそうな声で止めてくれと喘ぐ財前に酷く興奮した。
真っ白でふわふわに柔らかい胸を鷲掴みにできるユウがうらやましいと思い、その手が自分に代わらないかとすら思ってしまった。
女の子はこんな風に胸を触り合ったりするものだろうか、それとも彼女達が異常なのか。
今もきゃあきゃあと言いながらじゃれ合う声に、謙也の熱は一点集中で上がる一方だ。
「ほら手ぇ外して!サイズ測るんやから!」
「さっ先服着してくださいよ!」
「何言うてんの。折角なんやから正確なヌードサイズ測ったげるって言うてんの!」
「遠慮しときますって!」
「もー!ごんた言わんの!ユウちゃん押さえといてちょうだい!」
「OK牧場任しときぃー」
「ひゃあっっ」
「ここも綺麗な色ねぇーほんま綺麗なピンク色ー」
ここ、がどこであるか会話の内容から推測して謙也は無意識に息が上がる。
「さくらんぼみたいね!うらやましいわぁ光ちゃんの彼氏はーこれ好きに出来るなんて」
「やっっ……そんなんおらん!」
「ほな触られたいって思えるような殿方は?」
「おらへん!!いらんわそんなん!」
やっぱり彼氏いないのか、という喜びと、同時にされるそんなものいらない宣言に上がった熱がみるみる冷めていく。
だが不意打ちに上がる財前の声に再び急激に熱が溜まる。
「ひゃっっやあ!!イヤやっっ止めてくださっっ…あっ」
「可愛い声ねーもっと聞かせてちょうだい」
「なっ何言うとんねん!!ええ加減にし…っあん!あっ!」
「おーだんだん乳首立ってきよったな。感じてんか?」
「そんなんちゃうっっ……やぁっ!先輩っ手ぇ離してっっ」
この段ボールの向こうでは一体何が起きているのだ。
謙也は自身の中に棲む天使と悪魔に翻弄された。
覗きたい。財前の痴態をこの目で見たい。
だがそんな事をすれば確実に嫌われてしまうだろう。
それでなくとも限界寸前まで膨れ上がっているのだ。
妄想も股間も。
やはりこれ以上はやはり聞いていられないと、こっそり倉庫を後にした。