ヤンキー謙也さんってかっこよくないですか?
続き書きたくなった。
光ゲットする為に謙也さんと三馬鹿が奮闘する話とか。
Ready,Set,Go!!
学校では先輩に目ぇ付けられるのは日常茶飯事やった。
その度にレギュはっとる先輩らが助けてくれとった。
それがまた気に食わんねやってしょっちゅう陰口叩かれとったけど、あんまし気にならんかった。
そんなアホ相手にするんもアホらしいし、俺が変な事言うたりやったりして折角庇ってくれてる先輩らに迷惑かけるんも嫌やから無視しとった。
そんな俺もやっと最高学年になってアホの先輩に絡まれる事もなくなった。
けど、まさか街中でまで絡まれるとは思わんかったわ。
俺何かあるんか。
ほんまええ迷惑や。
謙也さんの家に遊びに行く約束しとって、最寄りの駅前で待っとけ迎えに行くから、ってメールきたから携帯いじりながら指定された場所向かっとった。
そしたら見るからに悪いですって風貌の中学生二人組と肩ぶつかってもぉて、おもっきり絡まれた。
最悪や。
ああもう部のアホな先輩らよりもっと頭悪そうな、所謂ヤンキーや。
めっちゃおがってきとんやけど、語彙なさすぎやろ。
さっきから何ぶつかってきとんじゃコラ、といきってんちゃうぞしか言うてへんし。
ほんまめんどくさい。
無視すんなやって胸倉掴まれて、流石にヤバいって思った瞬間そいつの腕を誰かが掴んだ。
「何やー自分ら。どこ中や。俺の後輩に何や用か?」
「謙也さん」
振り返ったら後ろから謙也さんがいつの間にか来とって、思っきし手首掴んでるもんやからそのヤンキーらは相当痛いんか顔色変わった。
師範や千歳先輩とかよりは劣るけど、同年代の奴らよりは断然握力もパワーもあるし、平均より高い身長から笑顔で見下ろされてちょっと態度変えよった。
ムカつくなー…俺どんだけナメられとんやろ。
どう見てもこのヤンキーのが年下やのに。
「はっ、離せやコラァ!!お前もいきってんちゃうぞ!」
ヤンキーらは手首掴んだまんま離せへん謙也さん睨み上げとるんやけど、謙也さんは笑顔でまあまあっていなすばっかしや。
普段のヘタレっぷりから考えてこの人が喧嘩するとこなんか想像つかんし、むしろこんだけサシでやりおうとるだけで結構意外なんやけど。
「そっちもな、あんま調子乗ってんと早よ帰りー」
謙也さんが相手にするつもりないんやって態度見せて二人から手ぇ離した。
ほな行こかーって謙也さんに背中押されて歩き始めた瞬間、後ろからヤンキーらが殴りかかってきよった。
うわって思うより先に謙也さんが庇ってくれて俺が殴られる事もなかったし、もちろん謙也さんも綺麗にかわしてる。
何やこの人、喧嘩慣れしとんか、って思った瞬間またヤンキーらが殴りかかってきよった。
「おいおい、やめとけや」
今度は二人で謙也さんに向けて。
やっぱり思った通り謙也さんは何べんも殴りかかってきてるん全部かわしてる。
「謙也さん危な…!!」
けど一瞬の隙ついて謙也さんの顔殴りかかろうとしたから思わず声出てもぅて、せやけど俺が何や言うより先に謙也さんの左拳がヤンキー片割の腹に入っとった。
「うわっ、入ってもーたやん!お前ら動くから…アホやなぁ…」
何やねんこの人。
いつもの部活で見とった、他の先輩にいじられて、後輩にまでナメられとった謙也さんどこいってん。
何これめっちゃカッコええやんけ。
流石にヤバいって思ったんか、ヤンキーらがどっか行こうとした時、後ろからその元締めみたいなごっついのんが来た。
金パのボウズで剃り込み入って柄ジャージにビーサンて。
どんだけ柄悪いねん。
うわ、もうあかんわ。
これには勝てんやろって思って身構えたけど、謙也さんは軽い調子でおう、って右手挙げた。
「先輩、お久し振りですー」
「久し振りやなあ。去年の祭以来か?」
え、何、知り合い?ってポカンって口開けて謙也さんとそのヤンキーのリーダー格みたいな奴の顔見上げた。
「謙也さん…お知り合いですか?」
「こいつなー一コ下で同小やってん。中学は地元行っとるから別やねんけど、近所に住んどるからよぉ遊んどんや。あ、こいつなテニス部の後輩やねん。同い年やで、自分と」
謙也さんがそのボウズに俺の事紹介した途端、柄悪い見た目とは裏腹に、めっちゃ丁寧に頭下げてくれた。
「初めまして!先輩にはいつもお世話になってます」
「ど、どもっス…」
同い年て。
同い年って。
ありえへんやろ。
どう見ても謙也さんより上に見えるって思っとったら、謙也さんが間に入って俺の事庇うみたいに立った。
「おいおいあんまガンたれんなや。光ビビっとるやんけ」
「え?す、すんません。俺目付き悪いもんで」
「い、いえ…」
ビビってるって事はないんやけど、ボウズはめっちゃ腰低く俺に謝ってくれた。
何やこれ。
謙也さんめっちゃ尊敬されてへん?
ヤンキーって上下関係厳しいらしいけど、こんな柄悪いんに恩売っとるって、この人地元でどないなっとんねん。
「お前らなぁーこの人が誰かも知らんとよぉ絡みにいったな」
ボウズの言葉に、ああ何かやらかしてんやろなって想像ついた。
先に絡んできとったヤンキーらはボウズ相手に完全に萎縮しとるし、このボウズがこの辺のヤンキーらの元締めなんやろ。
そんなんにこんな態度取らせるて、もしかして地元では泣く子も黙るってやつなんか?
クソッ、意外な一面見せられて一瞬カッコええとか思ってもーたやんけ。
四天ではただのヘタレのくせに。
「光?どないしたん?」
「いや…」
「あ、疲れたんか?ほなもううち行こか」
「はあ」
別に疲れてないけど、早いとここの居心地悪い空間からどっか行きたくて生返事しといた。
「ほな行くわ。よぉ後輩指導しとけよ」
「はい!すんませんでした!」
謙也さんの言葉にボウズは笑いながら、けど目は笑わん状態でヤンキーらの頭両手で押さえつけて深々と頭下げさせた。
それは俺らが角曲がるまで続いてて、やっぱり謙也さんってただモンちゃうんやって思った。
「……あんた、元ヤンなんっスか?」
「は?!ちゃうわ!!」
「いや、別に悪い言うとるわけちゃうけど…学校とキャラ違いすぎやろ」
「ヤンキーなんかモテへんやんけ!!」
「基準そこかぃ…」
おもっきし否定してくるもんやから何や物凄い理由でもあるんか思ったら。
けどいつもの謙也さんに戻ってて、ちょっとホッとした。
さっきみたいな謙也さんもカッコええけど、俺にはやっぱしこれぐらいユルい謙也さんが丁度ええみたいや。