激愛Paradox
本当は大好きだと言う勇気が欲しいのに、どうしてもあの人を目の前にすると素直になれないでいた。
中学に上がるより前、小学生の頃からずっと仲の良かった蓮二君と再び同じ学校に通えて、同じ部活で二人一緒にレギュラーになれて本気で嬉しかった。
蓮二君とは近所の雷ジジイをキッカケに出会った。
俺を目の敵にしていつも説教ばかりしてたジジイの孫、それが蓮二君だった。
あのジジイは口煩くて苦手だったけど、学校が休みの度に蓮二君がやってくるのがいつも楽しみでしかたなかった。
その家で蓮二君も住む事になって、東京から引っ越してきてからは顔を合わせない日はなかった。
毎日学校へ行く時も、帰ってからも、休みの日も例外はなくていつも一緒だった。
それだけに蓮二君が地元の中学ではなくテニスの名門である立海大附属中を受験すると聞いた時の衝撃は相当なものだった。
何としてでも一年後に追いかけようと、普段はしない勉強を必死でやって何とか同じ学校に入った。
その時自分の事のように喜んでくれた蓮二君を見て、慣れない勉強を頑張った甲斐があったと本気で思えた。
けど入った先では蓮二君には蓮二君の世界があって、特に部長や副部長と仲のいい姿を見せつけられると、もう俺なんて蓮二君には必要ないんじゃないかと思えてしまう。
それだけが原因ではないけど、それでも一緒にいるのが気恥ずかしくなってついつい冷たい態度を取ってしまう。
無意識に昔の甘え癖が出てしまって、それを部の先輩達にからかわれる時が一番厄介だ。
いや、厄介なのは俺なんだけど。
本当は素直に言いたい。仲いいだろう、お前ら羨ましいだろうと大きな顔して自慢げに言ってやりたい。でもそれが出来ない。
気付けばいつもキツい言葉が無自覚のうちに口から出てきてしまって、いつも蓮二君に悲しい顔をさせてしまう。
〜続〜