紅妙蓮寺
今年も庭に椿が咲きました。
貴方と同じ響きの名をした、あの花です。
貴方は白が好きだと言っていたけれど、目に入るのは真っ赤な色ばかりで、それはまっさらな雪の庭を彩っています。
(中略)
赤也がここへやってきてすぐの頃はもっと穏やかで洗練された人だった。
それがここ数ヶ月は見る者が目を覆いたくなるような有様だ。以前は多少なりと人の出入りのあった離れも、今となっては赤也一人がやってくるのみとなっている。
生きる気力を失い、死んだような瞳で庭を眺める姿に赤也はひっそりと心を痛めていた。
辛辣な言葉も堕落した生活も、根本的に拒絶しない事には訳がある。
間もなく冬を迎える。
季節は恐らくこの人を攫うだろう。
蓮二は音もなく忍び寄る死の恐怖に蝕まれ、来る日も来る日も静かにその瞬間を待っていた。
〜続〜