But,BAD!!
柳蓮二という人は、隙なくとても洗練された人物だと思う。
秀麗、だとか、古雅、だとか、秀逸、高雅、何が何だかよく解らない雰囲気を表すには瀟洒、なんて難しい言い方もいいかもしれない。
兎に角そのような言葉がよく似合う、名前通りまさに柳のようなしなやかさと、蓮の花を思わせるしとやかな雰囲気があった。
それは部内に限らず校内でも同じような認識で、同級生に限らず下級生にも慕われていた。
ひたすら堅い雰囲気の真田や、常人と比べ一癖二癖とある幸村と違い、人当たりもよかった為にテニス部では特に頼られる事が多かった。
そんな完全無欠だと思っていたはずの彼が、そう、彼には抗えない心根があったようだ。
何をどうした事か、とても彼には相応しくないと思える男を恋人に選んでしまったのだ。この場合、男を、という部分には大した引っ掛かりは感じなくてもよい。
たとえ同性であろうと彼を過剰に慕う下級生達は部内に何人もいたのだから。だがその中で、何故あんなのを選んだのだと丸井は理解不能だと顔を歪めた。
これだけ恵まれているのだ、よりにもよって自分を振り回す我侭な暴君を恋人に選ばなくとも、と。
今もそうだ。
何が彼の気持ちを損ねてしまったのか解らないが、徹底的に柳を無視しているのだ。部室内でこの光景は尋常な事ではない。
恋人である柳を無視して、苦手としている真田に自分から話しかけているのだから違和感と不自然さは拭いきれない。
それに耐え切れなくなった柳生が柳に気を遣い声を掛けようとするが、一足先に柳は部室を出て行ってしまった。
〜続〜