You too〜シグナル8
表紙イラスト;桃夏あや様
確かこんな風に暑い夏の盛りだった、二人が出会ったのは。
照りつける太陽が重そうな積乱雲を掻き分け容赦なく真っ白な肌を焼く。
耳鳴りのように五月蝿い蝉の鳴き声が誰かの悲鳴のように思えると、殴られ、蹴られしながらぼんやりと考えていた。
もう痛みは感じない。麻痺したように手足も動かない。ただ異様に研ぎ澄まされた聴覚が聞きつけたのは大切な人の叫び声だった。
「止めろバカーっっっっ!!!てめぇらあっちいけ!!その人に触んじゃねえ!」
「げっ!悪魔の子が来たぜ!逃げろっっ」
地面に寝転んでいる為に足元しか見えないが、取り囲んでいた悪ガキ達は悪態を吐きながら蜘蛛の子を散らすように逃げていくのが解る。
それと入れ替えにやってくる、よく知る靴の持ち主を見上げると、先程までは肌を焼いていた太陽が容赦なく瞳に入ってきた。
眩しくて目を開けていられない。目を細めると特徴的な髪型のシルエットが見えた。
「……大丈夫?」
「…ああ……」
「ほら、立ってよ。痛いだろ?そんなとこ寝転んだままじゃ」
「うん……」
真っ黒だったその人影も、目が慣れるにつれ徐々に表情が見えてくる。とても心配そうな瞳とぶつかり、それを安心させるように微笑んだ。
「大丈夫、いつもの事だ」
「あいつらマジムカつく!!アンタが悪いわけじゃねえのに!いっつもイジメやがって!」
自分の事でもないのに、こんな風に怒ってくれる。それだけで嬉しい。誰に何を言われても構わない。この子はちゃんと自分の事を解ってくれている。
それで十分だった。
〜続〜