柳生視点な赤柳です。
柳生は柳が好きなので(友人として)本気で心配して、そして本気で応援してくれてます。
他の奴らのような邪心一切合切なしで。
Resetの幸村と柳の電話があった次の日のお話でした。
La Familia 23.時の流れ
あの二人は兄弟なんだよ。
そう幸村君に聞かされた時は心底驚きました。
これはまた正反対な兄弟だ、と思い血の繋がりを疑えば案の定。
しかし二人は本当に仲睦まじく、互いが互いを必要としているという事は明白。
我々と出会うより以前もそうだと疑っていませんでした。
彼らの秘めた過去を聞くまでは。
二人が喧嘩をしたという事は、幸村君に聞かされて初めて知りました。
経緯も彼に聞きました。
そして丸井君と二人でその原因を作った友人をこっ酷く叱った翌日の話。
我々は真田君により幸村邸のリビングに集められました。
切原君は遠征で、柳君は実家に帰ったまま。
当人のいない間に聞き出すような話ではないのですが、事情を良く知る真田君と幸村君が代わりを務めてくれるとの事。
これからする話を揺ぎ無い覚悟で聞く勇気があるか、と幸村君に訊ねられます。
もちろんです。
私も、そして他の誰もが深く頷きました。
出会ってまだ数ヶ月だという事を忘れそうな程、見えない絆のようなものを感じていました。
この家に集まる皆を、まるで昔からの親友のような、家族のような思いで接してきました。
今何を知ろうと、たとえどんな現実であろうと受け止められる。
そう思っています。
重い口調で話されたのは、今年度が始まってすぐの頃から梅雨に入る少し前までの事。
たったひと月ほどではあるが、あの二人が別れて離れ離れになっていたという事実。
それが何を意味するか、誰も言葉を挟めないまま淡々と話す幸村君の声に耳を傾けています。
たとえどんな理由があろうと許されざるべき暴力を振るった切原君。
そんな日々から逃げ出し、そして二人に拾われた柳君。
離れながらも、やはり惹かれ合う思いは止められなかった。
あの時蓮二が赤也の元に帰ってしまって淋しかったけど、またこうして一緒に暮らせて嬉しい。
そう言って見せる幸村君の笑顔に何の衒いも迷いもありませんでした。
柳君の手首に残る消えない傷痕。
それは切原君の心にも同じだけの痛みを残し、今も苦しめているはず。
ですが、きっとあのお二人には誰にも邪魔できない特別な絆があるのでしょう。
長く時を共にして育んだ思いは永劫途切れる事はないはず。
そう信じたい。
だから必ず彼はまた帰ってくる。
ここには彼を愛する多くがある。
彼の愛する多くがある。
そして何より愛しい人がいる。
今まで生きてきた中で、こんなにも誰かと誰かの幸せを望んだ事はない。
それでも願わずにはいられない。
これからの二人にも、沢山の幸せが訪れます様にと。