Glass Castle in a Sanctuary〜メメント・モリ

Last Section



バサリ、と大きな羽音を立て屋根に下り立った。
太陽の光にキラキラと反射する真っ白な翼に、黒い翼の持ち主が顔を顰める。
睨むように見下ろせば、半ばバカにしたような視線を返される。
「お人よしー」
「何の事だ」
「んもー…自分が一番よぉ解っとるくせにそういう言い方するー…ほんま素直やないなぁ…今日やろ?あの契約者の運命の日」
ハクラの言葉など右から左へ。
アーチェンは立ち並ぶ住宅の屋根の上をふわりふわりと渡り歩いていた。
視線の先には二人の男。
同じ制服を着た、細身で背の高い少年とクセ毛と意志の強そうな瞳が特徴的な少年。

再び運命の時間が近付いてくる。
クセ毛の少年は耳元で黒い天使の囁きを聞いた。
今この瞬間を守る為の勇気を持て、と。









優しい風に背中を押されるように、赤也は拳を握り締め、ずっと心に秘めていた言葉を音にした。
「柳さん…俺………アンタの事―――」
誰もいない通学路。
赤也の声が響いた。


その後どうなるかは二人の運命次第。
より強い思いが勝つのだ。
思い人を連れて行こうとする負の力と、それを留まらせようとする正の力。








「やっぱりお人よしー」
屋根の上に戻ると、ハクラが嬉しそうに肩を叩いた。
それにアーチェンも滅多に見せない笑みで答える。
「もしあいつがあのまんま先の契約を選んでたら、どっちみち事故の後遺症で柳君の命は長なかったんやろ?」
「……ああ」
テニスどころか普通の生活も望めないような状態に絶望していただろう。
それを回避したのは赤也の決断と勇気。
一瞬でも傷付けたくないという強い思い。
「読んで字の如く、ってか。運ばれた命から生まれた愛やな」
「運命…か」
やはり人の運命は常に人の手の中にあるのだ。
強く強く握り合った赤也と柳の手を見つめ、アーチェンは静かに呟いた。
「これからはその命を大切に守ってやれ」
「幸せになーお二人さんっ」
だがその声はもう赤也に届かない。
ならば、と白い翼の持ち主が掌を天にかざせば、祝福の雪が花びらのように舞い始める。
今年最初の雪が低い空から舞い落ちる中、二人は再び空へと舞い上がった。



Endless end〜

この天使と悪魔シリーズは長いです。
前のジャンルでも前の前のジャンルでも、そのまた前のジャンルでも扱ったネタなのです。
お気に入りのお話なので赤柳でも描きたかった。
題材が題材だけに、どうしてもちょっと苦しい展開になってしまうからそれだけが嫌なんやけど…
結果はちゃんと好転させてあるのでええかな、と。
で。
うちの立海小説内では珍しく真田の扱いがよいなぁ…と書き上がってから、ふと思った。
引退したってまだまだ頼りにしてます副部長って事ですな。………たぶん。

白い人が言うてた『運ばれた命から生まれた愛』はキンキさんの恋涙って曲からいただいてみた。
死なせない 運ばれた命から生まれたラヴ って一節。
まさに、ですよ。
え、赤柳は運命の二人ですが何か?(素)
本当は結ばれるはずだった二人だけど、ほんの少しの不可抗力から大きく運命の流れが変わっちゃった。
でもやっぱりそれには逆らえなくてー…最後どうなったかは、皆様のご想像にお任せします。
うん、でも無事に運命の時刻をやり過ごせたと思いたいです。
運ばれた命から生まれたラヴですから。

go page top